熱中症対策の義務化から1年!企業が取るべき対策や事例を解説

熱中症対策の義務化から1年!企業が取るべき対策や事例を解説
2026.07.10更新(2025.07.30公開)

本記事では、熱中症対策義務化の背景や業種別発生状況、企業が取るべき具体的な熱中症対策について詳しく解説します。

2025年6月1日より改正労働安全衛生規則が施行され、条件を満たす作業を実施する事業者に対して熱中症対策が義務化されました。企業としては従業員の安全と健康を守り、法令を遵守するための具体的な対策を講じることが急務となっています。「万全に熱中症対策を整えなければならない」「自社は法令を満たしているか」と不安を抱えながらも、具体的な判断ができず、対応が後手に回ってしまう企業も多いのではないでしょうか。

【この記事で分かること】

  • 2025年6月に熱中症対策が義務化された法改正の背景と概要
  • 義務化違反時の罰則リスク
  • 企業に義務付けられた3つの熱中症対策
  • 業種別の熱中症リスクと対処法

目次

なぜ熱中症対策が義務化されたのか?法改正の背景

2025年6月に熱中症対策が義務化された背景には、職場での熱中症死傷者数が過去最多を更新し続ける中、企業に対して予防措置を法的に義務付けることで、労働者の命と健康を守ることが急務と判断されたことが挙げられます。

近年、気候変動の影響により年間を通して気温が上昇傾向にあり、職場での熱中症による労働災害が深刻化しています。厚生労働省によると、熱中症による死亡災害は2022年から3年連続で30人を超えており、これは労働災害による死亡者数全体の約4%を占める重大な問題です。

熱中症による死亡の多くは、めまいや立ちくらみといった初期症状の放置や、救急要請などの対応の遅れが原因とされています。しかし従来の労働安全衛生法では、「初期症状の放置」や「対応の遅れ」についての明確な規定がありませんでした。

そこで2025年の改正では熱中症による死亡事故を防ぐために、症状の早期発見と迅速かつ適切な応急処置を重視した内容が規定され、熱中症対策が義務化されたのです。

参考:厚生労働省「2025年(令和7年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」
厚生労働省「労働災害統計 労働災害統計確定値」

職場における熱中症の死亡事例(2025年)

以下は、職場における熱中症による2025年度の死亡事例です。

【2025年の死亡事例】

業種 年代 気温 暑さ指数
(WBGT)
事案の概要
6月 警備業 70代 34.4℃ 30.1℃ 被災者は、道路工事の交通誘導の作業が一時中断した際、歩道の木陰で横たわりながら休憩していた。作業再開が伝えられたため、ヘルメットを被ろうとしたところふらついて倒れ、地面に後頭部を打ちつけた。意識はあったものの頭部から出血が止まらない状態であったため、救急搬送されて手術を行ったが、16 日後に死亡した。
7月 産業廃棄物処理業 40代 38.0℃ 28.3℃ 被災者は、工場内において、ファン付き作業服を着用し不燃ゴミのペットボトル選別作業に従事していた。終業前に清掃作業をするため、屋外で竹ほうきを使用して掃き掃除をした際、意識が朦朧として倒れそうになったところを同僚に助けられ、事務所に向かう途中で意識を喪失したため、救急搬送された。搬送先の病院で療養していたが、容態が急変し3か月後に死亡した。
7月 その他の土石製品製造業 40代 32.7℃ 31.7℃ 被災者はプラントの屋内で補修作業に従事していた。正午になっても休憩所に戻ってこなかったことから、上司が当該プラントに様子を見に行ったところ、意識不明の状態の被災者を発見した。発見後、救急搬送されたが後刻死亡した。

引用:厚生労働省「2025年(令和7年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」

職場における熱中症の死傷災害発生状況

職場における熱中症による死傷災害の発生状況

参考:厚生労働省「2025年(令和7年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」

厚生労働省の統計によると、職場における熱中症による死傷者数は増加傾向にあります。特に、夏季の平均気温が上昇している近年では高い水準で推移しており、2021年(令和3年)には561件だったのに対し、2024年(令和6年)は1,257件、2025年(令和7年)には1,803件と大幅に増加しています。

熱中症は死亡災害にいたる割合が他の労働災害と比較して約5倍~6倍ともいわれていて、企業としては看過できない大きなリスクとなっています。

熱中症対策義務化の対象条件と罰則リスク

工場の空調

改正労働安全衛生規則では、事業者が講じるべき熱中症対策が具体的に定められています。ここでは、熱中症対策義務化の内容について詳しく解説します。

施行日と適用範囲

改正労働安全衛生規則の施行日は、2025年6月1日です。熱中症対策の義務化は、一定の作業条件を満たす場合に、業種や企業規模を問わず対象となります。

対象となる作業条件

改正労働安全衛生規則では、以下の作業条件を満たす場合に熱中症対策が義務付けられています。

  • 暑さ指数(WBGT)が28℃以上、または気温が31℃以上の環境下での作業
  • 連続して1時間を超える作業、または1日の合計作業時間が4時間を超える作業

この条件に該当する作業が発生する場合、すべての事業者は後述する体制整備や対処手順の策定が必須となります。

屋外での高温下の作業や、屋内であっても高温多湿な環境では暑さ指数が上がりやすいため、熱中症対策義務化の対象になると想定されます。以下に、熱中症対策義務化の影響が大きいと想定される代表的な作業例を記載します。

区分 作業例
屋外
  • 建設現場・土木工事現場での作業
  • 屋外での農作業
  • トラックの荷台・コンテナ内の積み下ろし作業
  • 交通誘導、イベントのテント設営や撤去
  • 屋外でのゴミ収集作業
屋内
  • 倉庫での仕分け作業
  • 空調が不十分な工場・加工場での作業
  • ビニールハウス内での作業
  • 廃棄物処理施設・焼却施設などでの作業
  • 熱源がある場所での作業

WBGT値(暑さ指数)とは

WBGT値(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)とは、熱中症の発生リスクを評価するために国際的に用いられている指標です。WBGT値は気温だけでなく、湿度、日射・輻射熱を考慮して算出され、熱ストレスのレベルを示しています。

WBGT値は、環境省の「熱中症予防情報サイト」で実況と予測を確認できるほか、専用の測定器で計測することも可能です。

環境省「熱中症予防情報サイト

▼身体作業強度等に応じたWBGT基準値

身体作業強度等に応じたWBGT基準値

引用:厚生労働省「職場における熱中症対策について」

義務違反時の罰則(罰金・使用停止命令・損害賠償)

熱中症対策は、労働安全衛生規則に追加される第612条の2「熱中症を生ずるおそれのある作業」に当てはまります。これは労働安全衛生法第22条に基づくもので、事業者に対し措置義務が課されるものです。
この労働安全衛生法第22条には罰則が設けられており、熱中症対策の実施義務に違反した者には、「6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科され、また法人に対しても同様に「50万円以下の罰金」が科される可能性があります。さらに、都道府県労働局長や労働基準監督署長により、作業の全部または一部の停止を命じる「使用停止命令」を受けるケースもあります。

実際に労働災害が発生した場合、労働契約法に基づく「安全配慮義務」違反を問われ、損害賠償責任を負うリスクも考えられます。

参考:厚生労働省「職場における熱中症対策について」
「労働安全衛生規則 第六百十二条の二」
「労働安全衛生法 第二十二条」

企業が義務付けられる「3つの具体的な熱中症対策」

企業は、「1.早期発見のための体制整備」「2.対処手順の策定」「3.関係者への周知・教育」の3点を義務として実施しなければなりません。以下に、それぞれの具体的対策をご紹介します。

1.早期発見のための体制整備

熱中症対策の第一歩は、リスクを「見つける」ための体制を整えることです。まずは職場環境のどこに熱中症のリスクが潜んでいるかを洗い出しましょう。具体的には、作業場所のWBGT値の測定、作業時間や休憩時間の実態調査、作業強度などを評価し、リスクレベルを把握します。

リスクを洗い出した上で、具体的な監視体制を構築します。例えば、管理者による定期的な「職場巡視」や、2人1組で互いの体調をチェックする「バディ制度」の導入が有効です。近年では、体温や心拍数などを自動で監視し、異常を検知するウェアラブルデバイスの活用も進んでいます。
熱中症のおそれがある従業員を早期に発見し、適切な対応を行うことが、熱中症の重篤化防止につながります。

2.対処手順の策定

対処手順の策定

熱中症のおそれがある従業員を発見した場合の「連絡先」「対応する責任者」を明確にするために、現場・事業所ごとの緊急連絡網を作成し、報告フローを決めておきましょう。最寄りの医療機関をリストアップし、連絡先や住所を共有しておくことも重要です。

また、緊急度別の対処方法を記載したマニュアルを作成し、いつでも確認できるようにしておきます。マニュアル作成時は、産業医や提携する医療機関の監修を得ることで、より実用的なものになるでしょう。その他、水分・塩分を補給できるものや身体冷却用の備品なども必ず事前準備しておきましょう。

3.関係者への周知・教育

整備した体制や手順を全従業員へ周知するとともに、熱中症に関する教育を徹底することも重要な対策です。研修などを通じて、従業員一人ひとりが熱中症の症状やメカニズム、予防方法、緊急時の対処手順について正しく理解できるように指導します。

具体的には、熱中症の危険性を示すポスターの掲示や、朝礼や会議の場での注意喚起、社内メールやイントラネットを活用した定期的な情報発信などが効果的です。

参考:厚生労働省「職場における熱中症対策について」

義務化基準+αで取り組みたい職場の熱中症対策事例

法令の最低基準を満たすだけでなく、業務面・環境面・設備面の三方向から取り組むことで、熱中症リスクを大幅に低減できます。ここでは、導入しやすい熱中症対策の事例をご紹介します。

対策 内容
冷房設備やミストシャワーの設置 作業環境の気温自体を下げる
作業時間の短縮 シフトの調整などで作業時間を短縮することで、高温下での連続作業時間を減らす
服装の調整 通気性・透湿性が高い服、身体を冷却させる機能を持つ服などを支給する
プレクーリングの実施 プレクーリングとは、作業の開始前や休憩中に身体を冷やしておくこと。涼しい休憩室で過ごす、シャーベット状の飲料を摂取するなどが効果的
暑熱順化の期間設定 暑熱順化とは、身体を暑さに徐々に慣れさせていくこと。数日から2週間程度かけて徐々に作業時間や強度を上げていくことで、汗をかきやすくなり、体温調節機能が向上する
健康管理アプリの導入 アプリやウェアラブルデバイスなどを導入し、日々の健康状態を管理する
熱中症予防管理者の選任 産業医や衛生管理者など、専門的な知見から判断できる人物を設置する

参考:厚生労働省「導入しやすい熱中症対策事例紹介」

業種別発生状況と具体的な対策

熱中症の死傷者は製造業・建設業の割合が高く、それぞれの作業環境の特性に応じた対策が必要です。

熱中症による業種別死傷者数の割合

熱中症対策による業種別死傷者数の割合

参考:厚生労働省「2025年(令和7年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」

2021年~2025年の5年間の業種別死傷者数の割合では、製造業が19.1%ともっとも多く、次いで建設業が18.7%、運送業が13.4%となっています。建設業と製造業を合わせると、死傷者数の約4割を占めており、両業種への重点的な対策が求められます。

建設業における注意点と対策

建設現場は屋外作業が多く、気象条件の変化に直接さらされるため、熱中症リスクが特に高くなります。

直射日光があたる

屋根や構造物がない作業環境では、直射日光でWBGT値が大幅に上昇します。テントや日よけシートで日陰を確保し、日差しが強い時間帯の屋外作業を極力避け、早朝・夕方にシフトする工程管理が有効です。ファン付き作業服や遮熱素材のヘルメットも、積極的に活用しましょう。

照り返しが強い

アスファルトやコンクリートの照り返しは、地表付近の気温を大幅に上昇させます。打ち水は日差しの弱い早朝・夕方に行いましょう。休憩場所には、身体を冷却できるグッズや設備を配置することが重要です。

風通しが悪い

養生シートや防音パネルで囲われた現場は高温多湿になりやすく、体感温度も上昇します。大型ファンや送風機で空気を循環させ、こもった熱気を排出する環境整備が重要です。

重量物を運ぶ

重量物の運搬は作業者への負担が大きく、体温上昇を促進させます。台車やフォークリフト、リフターを活用しつつ、2人作業を原則化して無理な単独作業を防ぐことで、熱中症リスクを低減できます。

休憩場所まで遠い

休憩場所までの距離が遠いと移動時間が長くなり、十分な休息を確保できません。そのため、移動時間を考慮した工程管理を行い、実質的な休憩時間を確保することが重要です。可能であれば、作業場所の近くに仮設休憩所を設置しましょう。

持ち場から離れられない

交通誘導員や特定の機械の操作担当者など、その場を離れられない作業者は、自発的に休憩を取ることが困難です。管理者が定期的な休憩ローテーションを設定し、作業者が確実に休息できる体制を整えましょう。

製造業における注意点と対策

製造業は屋内作業が多いため安全と思われがちですが、特有の熱源リスクが存在します。

炉がある

金属加工、ガラス、セラミックスなどの製造工程では、炉からの輻射熱で周辺温度が上昇します。遮熱版の設置や遠隔操作・自動化によって、炉の近くで作業する時間を最小限に抑え、大型ファンを設置して換気を促進しましょう。

熱源がある

機械設備、モーター、照明などの熱源が集中する工場内は、エアコンがあっても室温が上昇しやすくなります。各作業エリアのWBGT値を常時計測し、基準値を超えた場合に自動アラートを発するシステムの導入が有効です。

日当たりが良い

屋根や壁の断熱材が不十分な工場では、日射による室温上昇が顕著になります。屋根への遮熱塗料の塗布や断熱パネルの設置は初期投資が必要ですが、長期的な熱中症対策として効果的です。また、窓に遮光フィルムを貼ることも即効性のある対策です。

職場での熱中症対策をサポートするALSOKサービス

熱中症対策では、現場での予防策に加え、従業員の状況確認、緊急時の対応、健康相談体制の整備なども重要です。ALSOKでは、こうした企業の安全管理を支援するサービスを提供しています。

  • 安否確認サービス
  • AED
  • 防犯カメラ・監視カメラサービス
  • 相談窓口サービス

安否確認サービス

ALSOKの安否確認サービスは、災害などの緊急時に従業員の安否を迅速に把握できるシステムです。また、熱中症リスクが高い環境で作業する従業員の体調を確認する、健康管理ツールとしてもお使いいただけます。一斉送信や自動集計機能を活用することで、管理者の負担を軽減しつつ、きめ細やかな健康管理体制を実現します。

AED

熱中症が重篤化すると、心停止を引き起こす危険性があります。その際に救命の可能性を大きく高めるのがAEDです。ALSOKでは、突然起こりうる心停止から命を守るために、AEDの選定から導入・管理・使い方の講習会まで一気通貫でサポートしています。職場にAEDを設置し、従業員が適切な使用方法を習得しておくことで、万が一の事態に迅速かつ的確に対応できる体制が整います。

防犯カメラ・監視カメラサービス

高温の作業場所や従業員が1人で作業するエリアなど、管理者の目が届きにくい場所の安全管理には防犯カメラ・監視カメラの導入が有効です。ALSOKの防犯カメラ・監視カメラサービスでは作業現場の状況をリアルタイムで確認できるため、従業員が倒れたなどの異常事態をいち早く発見可能です。遠隔からの映像確認も可能で、複数拠点の状況を一元管理できます。

相談窓口サービス

ALSOKでは、従業員向けの相談窓口サービスをご提供しています。相談窓口サービスを導入することで、24時間365日看護師もしくは管理栄養士に健康相談ができます。熱中症の対処方法や日頃の健康相談に加え、心理カウンセラーへのメンタルヘルス相談、ハラスメント相談なども可能です。従業員の健康課題を発見しやすい体制を整えることで、個別の配慮や対策を講じるきっかけにもなります。

熱中症対策義務化に関するよくある質問

Q:正社員以外のパートやアルバイト、派遣社員も義務の対象になりますか?

A:雇用形態に関わらず、すべての労働者が対象です。そのため、パートやアルバイト、派遣社員も含め、事業者は同等の熱中症対策を講じる義務を負います。派遣労働者については、派遣先事業者が就業場所での安全衛生管理責任を負うため、派遣元・派遣先の双方が連携して教育や体制整備を行うことが求められます。

Q:エアコンのある屋内なら対策は不要ですか?

A:必ずしも不要とはいえません。エアコンがあっても、設定温度が不適切であったり、換気が不十分だったりする場合は熱中症リスクが残ります。そのため、屋内でも定期的なWBGT値の測定・管理、水分補給、適切な休憩時間の設定など、必要な対策を講じることが求められます。

Q:営業職や配送など、「1人で外回りをする」従業員にはどう対応すべきですか?

A:定期的な連絡と安否確認のルール化が重要です。緊急時の対応手順を事前に共有し、体調不良時には躊躇なく休める仕組みを作ることも欠かせません。また、携帯型の体温計、冷却グッズ、塩分補給タブレット、経口補水液などを会社が支給し、炎天下での業務中に活用できる環境を整えることが有効です。

まとめ

2025年6月からの熱中症対策の義務化は、職場における死傷者数が過去最多を更新し続ける中で、業界・職種を問わず多くの企業にとって向き合うべき課題です。従業員の身に万が一のことがあれば、労働災害対応や企業の管理責任が問われる可能性があります。①早期発見のための体制整備、②対処手順の策定、③関係者への周知・教育の3点を徹底するとともに、業種別の特性に応じた対策を講じることが重要です。